「でも、光はそんな普通の夢見るの…意外かも…」

「夕陽も俺と一緒に普通の夢見る?」

不意に目が合う。
こんな温かな時間が、ずっと時を止めてくれていたなら。

「こんな世界じゃなくて夕陽と普通に出会えてたらなぁ…。
俺は、夕陽と一緒に朝起きて、普通にデートなんかしちゃったりして、ごくごく普通のカップルみたいに誰にも咎められずに一緒に歩けたら、それだけですごい楽しそう!それって超楽しそう!」

「…それってあたしじゃなくてもいいじゃない」

「まぁ、ただの妄想?夢?
なんかお前といたらどんな事も楽しそうだな…」

そんな言葉をくれるくせにわたしの気持ちに応えてくれないのは何で?
一緒にいて楽しそうと思うなら、一緒にいてくれないのは何で?
わたしたちは、そんなどこにでもあるようなありふれた夢さえ、願ってはいけないのは何故?
光が答えなくても、もうわかっていた。
光はこの世界で戦って生きていく事を選んで、それに選ばれた人間なのだ。
そして、わたしもまた…。

「夕陽、手、繋いでもいい?」

「うん」

そっと握られた手のひら。
こんなに寒い冬の夜なのに、光の体温は温かくて
手を繋ぐだけで、こんな幸せな気持ちになれるなんて、わたしはこの世界に生まれて初めて知ったような気がする。

手を触れあう、救われた愛。
だけど近づけば、近づくほど、離されていく、愛。
わたしが幼い子供であれば、この愚かな愛を、あなたに伝えられていただろうか。