【完】さつきあめ

光がひょいっとわたしを抱きかかえ、お姫様抱っこをする形になる。
目の前には光の顔。お酒が入っていて本当に良かった。しらふの時こんなに光に顔を近づけられたら正気でいれる気は全然しない。お酒が入っているから、こんなにも大胆になれる。

「高橋今日はいいよ。俺がさくらを送っていく」

「えー社長、そいつマジで酔うとたち悪いっすよー?
まぁ送っててもらえるなら俺飲みに行こう~っと!」

思いがけないラッキー。
ってこんな事をラッキーと思うようじゃ、光の事全然忘れられそうにないけど。
今夜はこの幸福に酔いしれていたいと思う。
全部全部お酒のせいにして、この身を光に預けたいと思う。

て、いうか眠くてヤバイ…。
光の首に腕を回したまま、お店で意識を失った。

ふわふわと回る頭。
気持ち悪くなったり、トイレに行きたくなったり、光の香りに包まれながら、色々な感情が頭をめぐる。光の香り?

「……!!」

いつかのデジャブ。
身体を包むふわふわのベッドは、わたしのベッドじゃない。そして、この香り、いつかもこんな事があった。ゆっくりとベッドから起き上がり、寝室のドアをそっと開く。
リビングは明りがついていた。相変わらず殺風景な部屋だ。
辺りを見回す。リビングにも、キッチンにも、光の姿はない。けれどここは光の家だ。

リビングのソファーに置かれている自分の鞄から携帯を取り出す。
午前4時。すごく熟睡しているような気もしたけれど、1時間少ししか眠ってはいなかった。
ベランダの窓を見ると、少しだけ窓が開いていた。冷たい風が入ってくる。