「何でも手に入れても、満たされない物があるんだろ…。
お金持てば持つほど、寂しくなったりするんだよ」
深海の言葉に、ふと朝日の顔が思い浮かんだ。
あの人もすべてを手に入れても、どこか不満げで、全然満たされた顔をしていない人だった。人の心のかかえる闇なんて、考えた事もなかった。
「さくら、お前は時間を売っているだけだ。
桜井さんにも、時間内だけの優しさを。あんまり勘違いさせるような事はするなよ」
深海の言葉が心の奥に響いていく。
桜井の抱える孤独、わたしに望むもの。すべてが掴めなくて。
「おつかれー!
お、さくらいいところにいた!お前に話があってさ…って、お前酔っぱらってる?」
「しゃちょ~おつかれさまでぇす~」
床に寝転ぶわたしを、光は軽々と抱き上げた。
お酒で頭がぐるんぐるん回ってるし、何でも出来そうな強気な気持ちになるし、抱き上げられた光の背中に強く抱き着いた。
光の匂いが身体中を包み、安心する。
「お前細いなー…」
「しゃちょ~、具合い悪いよぉん…」
「社長どうにかしてくださいよ。さくら酔っ払いすぎだし、送り来ても帰らないってぎゃぎゃー騒いで、結局ここにいて。うるさいったらありゃしないっすよ」
「高橋くんのばぁ~か!売り上げあげてるんだから文句いうなぁ~!!」
「ここ最近は毎日こんな感じですよ…。
酔っぱらうのはいいけど、送りにはちゃんと乗っていけ!また俺がタクシーで送る羽目になるじゃねぇか!お前んち遠いんだよ!」
「今日もよろしくお願いしまぁす!それが担当の仕事ってもんれすぅ~」
「お前!」



