「でも、似てるんだ」

それは抑揚のない声だった。

「似てる?」

「この世界中で、俺が初めて確かに愛してると意識した女で
そんな俺を世界1惨めな方法で捨てた1人の女に、さくらは少し似てる」

背中に冷たい旋律が走る。
力をいれた指先、何でも手に入って、誰にも興味なさそうな男が見せた初めての執着心に。
恐ろしさのあまり、その腕を精いっぱいの力でふりほどいた。
朝日の顔を見るのは、もう怖かったんだ。

「あたしは…その人とは違う!」

もう振り向かなかった。

「さくら、ひとつ言っておく」

「……」

「お前が有明を好きになればなるほど、あいつをお前自身が苦しめていくんだ」

冬の空にも星はひとつも映さない。
邪魔なネオンの煌めきがすべてを隠すだけ。
わたしはこの街へ来て、宮沢朝日とゆりの上に立つ人間になると自分にあの日約束をした。
そして、その過程で出会った光にただ恋をしただけのこと。
たったそれだけのこと。
朝日の言葉の意味も理解出来ずに、独り佇む空に疑問を投げかける。

あたしが光を好きになればなるほど、あたしが光を苦しめる。

ただ好きで好きで好きでたまらない人を、この時何故わたしは一途にずっと想う事が出来なかったのだろう。いつまでも過去にとりつかれていたあなたをどうして守ろうとしてあげなかったのだろう。