「す、すごぉ!!
ねぇ見て!あれ東京タワーだ!!」

興奮のあまり思わずはしゃぎ、外を指さしながら朝日に言うと、朝日は今までに見たことのないような顔をし、目を細めて笑う。

ホテルのボーイが持ってきたシャンパングラスに口をつけて、深いソファーに身をおろし足を組む姿を見て、この人も光に負けず劣らず綺麗な男の人だったのかと改めて思う。
お金も持っていて、容姿も優れているならば、この男に言い寄る女は沢山いるのだろう。
趣味の悪いと思っていた身なりや装飾品も、この夜景をバックにすればそれがよく映え、この人にとても似合う。

「金さえ払えばどこでも優遇されて、どんな物でも手に入る。
世界で1番強くなれる」

自信満々で言い放つこの人は確かに全てを手に入れている人で
大きなソファーを片手で叩き、座ればと促す。 隙間を大きく開けて座ると、可笑しそうにまた笑う。
座り心地の良いソファーだった。今まで座ったどんなソファーよりも
けれどそれが居心地が良いかと問われれば、話はまた別だ。

「お金さえあれば何でも手に入りはしないと思いますけど」

「例えば?」

「人の気持ちとか」

わたしの答えに朝日は目をきょとんとする。

「それで手に入れたとしても、虚構だったり…」

もしもお金の力を使って光の気持ちを手に入れたとしても、それは本当の意味で手に入れた事にはならなくて、手に入れたとしても空っぽな気持ちで包まれるに違いないと思った。
そう思えば、人が本当に追い求めてるのはお金では決して手に入らない物ばかりなんじゃないかなって思った。