【完】さつきあめ

「光と…綾乃の…関係を教えて…」

突然わたしの体を引き離すと、肩を両手が掴み、見たことのないような真剣な顔をした。
初めてこの人の戸惑っている姿を見たような気がした。
こんな真面目な顔をする人じゃない。
光と綾乃、一体2人を繋ぐものはなんだったのだろうか。

「誰から聞いた?」

朝日の質問の意図はわからない。

「誰からって…高橋くんとか、お店の女の子も皆言ってた。
あの2人付き合ってるって…
高橋くんは綾乃が光の家に入っていく写真まで持ってた…」

「んでさくらは有明と綾乃の関係を疑って、嫉妬でそんな酷い顔をしていて、でも有明や綾乃に詰め寄っても何も答えてくれなくて、有明の奴は大切にしてたレイの奴をお前に近づけないように双葉に移籍させてってか」

「何で何でも知ってんの…」

「そんなに有明の存在ひとつで色々な物が揺らぐくらい、あいつのことが好きか?」

「好き………」

「ふぅん。まぁちょっと俺に付き合ってくれたら、お前が知りたがってること教えてやってもいいよ」

「いや、あんたになんか絶対少しも付き合いたくない」

「はっきり物事を言う女は嫌いじゃねぇ。
っと…」

その時、朝日は再びわたしを強く抱きしめた。
逃げようと手足をばたばたと動かしても、朝日の力には敵わなくて、逃げようとするわたしの腰を支えて、あの日と同じ、強引に深いキスを落とす。
息が止まりそうだった。片方の手でわたしの頭を無理やりおさえつけ、何度も何度も口づけを繰り返す。
僅かに唇が離れた瞬間、朝日は吐息混じりの声で小さく呟くように言った「みるな」と。
隠しものでもするように、わたしの体を強く押し付けて、何度も何度も唇を奪う朝日の肩越しから、見たくもない光景を見てしまった。