【完】さつきあめ

「なんですか?」

「何でさくら俺にそんなに当たり強いんだよー…!
俺の電話に全然出てくんないしー」

そうだ。この男に携帯を取られてから、無理やり電話番号を知られ、1日に何回も何回もかかってきていた。それを当然無視していても、諦めずに何度も何度も着信に残っていた。

「あんなに掛けてきて、ストーカー?!
着信拒否にしてないだけでも優しいと思ってください!」

「ストーカーって!あっははは!
お前、俺はお前を雇ってやってるんだぞ?俺は雇い主、お前はただの店の駒。
お前を首にすることなんて俺には容易いんだぞ?」

俺は雇い主、お前は駒。
その表現は正しいのかもしれない。
全く悪びれもせずにそう言い切る朝日を前に、もう首になってもいいかな、なんて思う。
お店にいたって、綾乃とは争わなきゃならないし、光には振られっぱなしだし。

「首か…首もいいかもね。
もう七色グループで働きたくないし」

「なんだよ、有明となんかあったかぁ?」

ポケットから煙草を取り出し、火をつける。
きらきらの金髪の髪を揺らしながら、火をつけた煙草をわたしの顔の方へふーっと吐き出す。

「あんな奴辞めて俺にしておけよ」

「冗談っ!あなたなんて大嫌いだし!」

「この俺にそんな口聞く女って………やっぱ面白いな」

「面白いもくそもないですよ。首にしたきゃ首にすればいいでしょ?気に入らないものを排除するのが大得意のようで」

「気に入らねぇもんは排除するのは間違いねぇけど
俺はお前が気に入ってんだよ。だから店は首にしませぇ~ん!」

「なんなのあんた!むかつくんだけど!あたしの事気に入らないで!他にも女なら沢山いるじゃない!最低…!」