【完】さつきあめ

「あたしみたいのが、なんて言うのはやめなさい」

小笠原が少し強い口調で言う。

「自分を卑下するような言い方は好きじゃない。
さくらは自分が思っている以上に素敵な女の子だと思うよ」

「…ありがとうございます」

「人の言葉を素直に受け取れるのが君の１番良いところなんだから。

正直に１番になりたいって言ってくれて僕は嬉しいよ。
よし、今日はシャンパン開けようか、ちょっといいやつ」

「小笠原さん待って！あたしそういうつもりでこの話したわけじゃなくて」

それでも小笠原はにこりと微笑んで、黒服を呼んでシャンパンを持ってこさせた。

上を目指して、目標を持ち頑張ることは良いことだ、と言いながら。
こうやって、自分では自分の嫌いなところを小笠原はいつだって良いところに変えてくれて、気持ちを楽にしてくれた。
ふと深海に言われたことを思い返していた。

‘さくらはさくらでいい’

‘お前がレイになれないように、レイもお前には絶対になれない。
それならば、お前はお前のやり方でナンバー１になればいいじゃないか‘

相手を自分を比べて、自分を見失った。
また、同じ間違いを犯さなければいい。

綾乃は綾乃で、わたしはわたしなんだ。