わたしは傲慢で自分のことばかりの嫌な女だけど、それを黙って良い子で居続けようとするのはもうやめた。
わたしは結局綾乃と向き合うのが怖かったんだ。
あの柔らかい手が、愛しそうに綾乃に触ることを想像しては、綾乃に嫉妬していたんだ。

「綾乃ちゃん…」

「何?」

吸っていた煙草を灰皿に押し付けて、再び煙草に火をつける。
煙草の煙がまるでわたしに近づくなと言っているよう。
綾乃の立場に立って考えればわかることもある。綾乃も光が好きならば、わたしが光と出かけることや、光に優しくされるのを見るのは嫌なはずだ。わたしだって無神経に綾乃を傷つけてきたのかもしれない。

「わたし、光のことが好き」

「それで?」

「振られてるんだけどさ…。それでも好きだから、やっぱりここでナンバー1になりたい。それでも光が振り向いてくれる保証がないってわかってる。
でもやっぱり好きだから、光に認めてもらえる女になりたい」

真っ赤な口紅をひいた口元がふっと笑う。
煙草の火を消し、わたしを見上げてきた綾乃の瞳は強かった。

「じゃあ、さくらとは今日からライバルね」

「ライバル…?」

「あたしは…さくらが本当にあの人を好きなら、それを諦めさせる必要があるの。
悪いけど、ナンバー1にはさせない」

「やっぱり…綾乃ちゃん…光のこと…」


綾乃はそれ以上はもう何も言わなかった。

わたしをナンバー1にさせないと宣言したことは、つまりはそういうことなのだ。
レイが空いた穴で、先月の結果だけ見れば今期のナンバー1に1番近かったのは、わたしだ。けれど綾乃はそれをさせないということ。