「俺と帰っていいのか?」

深海が静かに聞いてくる。いつもわたしを見ている人なら、わたしの気持ちなんてお見通しだろう。
俯きながら携帯に目を落とす。
光にラインを送ろうか、なんてさっき一緒にいることを拒否したのに、なんてゆらゆらしていて定まらない心なんだろう。

「病院にいて…光がレイさんに優しくしてるの想像してると…辛い…。
レイさんが苦しい時に嫉妬なんかしたくない…」

「そうか」

「ねぇ、深海さん…光の彼女って…
綾乃ちゃんなの?」

ずっと疑問に思っていた。
いつもどこかで感じていた。
時々酷い違和感があった。
全てを見透かしたような瞳も、同じような思考も、あんなに光を好きになることに嫌悪した。
2人を繋ぐ何かがきっとどこかにあるような気がして。

「何で…」

深海の言葉が曖昧さを残して、余計に疑ってしまう。
携帯を見つめる顔をあげ、キッと深海を睨む。なおも深海は前をずっと向いたままだった。
暗い車内では深海の表情を伺い知ることは出来ない。
でも違うならすぐに違うと否定すればいいだけのこと。その深海の曖昧な言葉が憎かった。


「質問の答えになってない…。
あたしずっとおかしいと思ってた…。綾乃ちゃんが双葉ではナンバー1だったことや、レイさんと言い合いした時、いつも有明って呼ぶのに光って呼び捨てにした。
綾乃ちゃんはずっと光を好きになることを嫌がってた。仲良くしてたのにそれがずっと疑問だった…」

「綾乃が、裏でさくらを裏切ってるっていいたいのか?」

「裏切りとかそんなんじゃないよ…。
はるなさんも昔光と綾乃ちゃんが付き合ってたって噂聞いたことあるって言ってたし、付き合ってるならはっきり言ってほしかった…。だってあたし、綾乃ちゃんと友達だと思ってたから」

「友達だと思ってるから言えなかったとしたら?」

「友達だったら言ってくれるもんなんだよ…」