「ふーーーーん、仕事前に2人で密会?」

後ろから聞こえた声に、思わず身を縮こませる。
振り向いたら、朝日が女の人と立っていた。
今日も変わらずに軽薄そうに笑い、隣にいた派手な女の子は朝日の腕に自分の腕を絡ませると、ニヤニヤとわたしを見て笑った。
朝日の隣にいたのは、ONEのナンバー1で、朝日と噂をされている女ではない。あの女はきっとこうやってあからさまな安っぽい挑発をわたしに向けるような女ではないだろう。

絡ませてきた腕を朝日は笑いながら乱暴に振り払った。

「なぁ、さくら、電話に出ろよ」

あの倒れる前に朝日に携帯を奪われ、ひと悶着あった。昨日の夜から知らない番号から電話が数回かかってきていたが、それはおそらく朝日だったのだろう。

「お前ら、付き合ってんの?」

冷たく言い放った。
けれど、光はそれをすぐに否定した。

「やめてくださいよ。さくらとは何にもありませんし、お互いに何とも思ってないです。
それに俺には彼女がいるの、知ってるでしょう?」

頭を鈍器で殴られたような気持ちだった。
別に何ともなくても良い。けれど少し光から守ってもらいたい気持ちがあったのと、彼女という今まで知らなかったワードが出てきたこと。
彼女がいながらキスをし、ふたりで出かけていたという光への不信感。
すべての不信感から、頭が狂ってしまいそうな激しいショックを受けた。