「でもナンバー1は…難しいよね。
あたしはレイさんみたいに魅力的じゃないし、あんな風に華やかな人にはなれないと思う…。結果がすべてだっていうことも少しだけでもこの世界にいれば何んとなくわかるよ」

「夕陽、そうじゃなくて…」

言いかけた時、小さな男の子の兄弟がわたしたちの前を笑ってかけていった。
おいていかないでよー、とその男の子たちの後ろから、少しだけ幼い少女がおぼつかない足取りで追いかけていく。3人兄弟かな、と微笑ましい気持ちになる。

「でもさ、1番になりたいって思ったのは本当に光のためだけじゃないから!
仕事も段々楽しくなってきたし、自分で自分の限界も決めたくないんだ。だからあたしの夢を光だけは笑わないでね」

「…笑わないよ…」

走り抜けていった3人兄弟を目を細めながら見ながら、言った。
たとえば幸せな記憶があったとして、大好きな人に裏切られた時、人はどうなるのだというのだろう。何も知らない無垢な心のままいつまでも笑い合えていたならどんなに幸せだったろう。
ずっと守ってくれていたのに、光の本当の言葉をあの日わたしは聞いてあげられなかった。

バックの中に入っている携帯が振動で揺れる。
間違えてしまっていたのは、わたしだったのか、あなただったのか。