確かに物珍しい観光地にテンションが高くなったのは事実だけれど、必要以上に元気に振舞っていたのは、連日色々なことがありすぎて、それを忘れるために無理やり元気なふりをしていた部分もあった。
悲しいことや仕事のこと、これから起こることを考えたら憂鬱になる。光と一緒にいれる時間くらい元気なわたしでありたい。

さすが観光名所と言われるだけあり、外国人観光客も目立っていた。
ここでなくても買えるようなどこにでも売っている日本のお土産を外国人観光客はこぞって買っていた。

雷門で写メを撮ってもらい、テレビでよく出ている浅草寺の煙のところへ行って、お互いに煙をかけあってはしゃいだ。

花やしきに行こう、と光が言うので行って見るとそこは昭和レトロな外観の遊園地の風景が広がっていた。小さな子供用に作られた遊具ばかりだったけれど、遊園地と名のつくものは何歳になっても心をときめかせる。
古典的なお化け屋敷に本気で驚き、小さすぎる観覧車は数分で終わってしまい笑い、ジェットコースターではふたりで笑い合った。

その頃にはすっかり陽も暮れようとしていた。

「夕陽だ」

空を指さし、光が笑う。
自分の名を呼ばれたわけでもないのに、光が夕陽という単語を口にするたびに心が揺れる。
「綺麗だね」と言って2人で見つめる先には、柔らかいオレンジ色の空が広がっていた。


「ごめんな、夕陽」

「え?」

「気持ちに応えられないのにあんなことをしてしまったり、ナンバー1になんかならなくていいなんて言ったり…」

「それは全然光のせいじゃないよ…!!
気持ちに応えないくせにあんな事したのは、確かに女好きと思ったけど」

わざとおどけた口調で言って見せた。