「おはよっ」

目が覚めたら光はいつも通り。
昨日のキスも、拒否をしたことも、震えていたことも全部嘘のようにいつも通りの笑顔をこちらへ向けてきた。
安心したような、気が抜けたような、複雑な気持ちでいると、窓から見た空はすっかり陽が明けていて目を瞑りたくなるような眩しい光りが入ってきた。

「もうお昼の2時だよ~」

「え?!もうそんな時間?!
やば、仕事のこと何もしてない!」

「俺今日休みなんだー」

「えーずるい!てか携帯に連絡やばい…」

ずっと見ていなかった携帯にはお客さんからの連絡が数件入っていた。
慌てながら一件一件返していく。

「真面目だなぁ」

光はしみじみその光景を見ていた。
って…何でこんなに真面目に返してるんだろう。
光には振られちゃったし、ナンバー1にならなくていいって言われちゃったし、もう頑張る意味なんてないよ、と自分に言いかけて、はっと気づいた。

「ナンバー1になりたかったのは、光のためだけじゃないよ…」

独り言を呟くように言う。

「確かにナンバー1になったら光に認めてもらえて、もしかしたら好きになってもらえるかもとも思ったけれど、理由はそれだけじゃないよ。
でもさ、本当にレイさんを超えてナンバー1になったら、光は少しでもあたしのこと考えてくれる?」


光は曖昧に笑う。
その問いかけの返答は決してしてはくれなかったけれど。