音も立てずにそっと近づく。
まるで死んでいるみたいに、近づかないと聞こえないくらい小さな寝息を立てて目を瞑っていた。
茶色の髪の毛に手を伸ばしても、起きる気配はなく、両手をソファーに添えて光の寝顔を見ていた。どうしてかはわからないけれど、寂しそうに眠る人だなって思った。

ぴくりとも動かないまま、目だけぱちっと開けると、反射的に身をひいた。

「あー…おはよ…」

「お、おはよう!」

「俺眠っちゃってたんだな…
夕陽、体大丈夫?」

「あたしは全然だいじょうぶ!!光こそ…疲れてるんなら眠ってなよ!」

「や、大丈夫」

かったるそうに立ち上がった光はキッチンに行き、冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し、わたしに渡す。

「ありがとう。あの、あたし…」

「覚えてないの?お前VIPルームで倒れて、無茶な飲み方すんなよ。心配になるからさ」

呆れ気味でペットボトルの水を一気に流し込む。

「ごめんなさい…。
ここは、光のうち?」

「うん。俺のうち。お前んち知ってるけど、送っててもきっとおきねーと思って俺んちに連れてきた……

……なんてちょっと言い訳がましいかな?俺がただお前を離したくなかったのかもな」