【完】さつきあめ

煙草の煙をふーっとはいて、まるで面白いものでも見つけたように愉快に笑う。
もちろん指名なんてされる義理もないし、会ったのもバーで何か月前1回きり。
挨拶をしたくらいで、ここにいる理由もない。
ましてや自分の系列の女の子を指名するなんて思っても見なかったけれど、美優に聞いたことはあった。噂になってるONEのナンバー1や会長はたまに気まぐれで系列の女の子を指名して飲みにいくと。
それならば、何故わたしのところに。


「レイは有明が昔から好きだからなぁ~…
あいつは性悪女だけど、変なところは一途だからなぁ~
それでさくらはそのレイに負けたくないから、頑張ってる。
有明モテモテだなぁ」

この男は、すべてを馬鹿にしたように笑いながら話す。
朝日のことが大嫌いだった。会う前からずっと…。

「勝手なこと言わないでください。あたしは…社長のことなんか好きじゃありません…」

突然、朝日がぐいっとわたしの体を引き寄せ、顎を掴む。

「やめて!」

両手でぐいっと朝日の体を離す。
優しく触れる光とは大違いで、強引にすべてを引き寄せようとする。朝日には光とは違う強さがあった。


「レイに勝ちたいか?」

「…それは勝ちたいです…」

「そうか」

そう言うと立ち上がり、VIPルームに取り付けられた電話を手に取る。
次の瞬間、信じられない行動をとった。