【完】さつきあめ

じゃあ、あなたは一体なんのために双葉でナンバー１だったのだろう。
そこには、光という大切な存在があったのではないのだろうか。
どれだけ話しても、綾乃に光との関係は聞けなかった。
どこか似ていて、たまに同じ瞳をする、同じ思考を持つ２人が特別な関係だっていうことを聞きたくなかったんだ。


「でもさくらも変ね」

「え？」

「変ねっていうのはおかしいかな？
さくらも頑張ってるね。
まぁさくらの客層は良いから、はるなを抜くのは時間の問題だったかな…」

綾乃の見透かしたような目が怖かったから、逸らした。

変わりたくないといくら願っても人は少しずつ変わっていくもんだよ。自分でも気づかないうちに、少しずつ。変わった先に手にしたものでわたしが満たされたものは果たしてあっただろうか。

少し焦っていただけで、少しずつ大切なものを失っていった。


「ドンペリくださ～い！」

山岡の卓だけではなかった。
わずかにしかいない卓でもレイは売り上げを伸ばしていった。

「すごいね～、あの子」

感心するようにレイを見つめる安川。
わたしはいつもよりほんの少し、安川に寄り添って、横目でちらりと彼を見た。


「本当にすごいですよね…あたしなんか全然かなわなくて」

「え？！俺さくらちゃんの方が全然良いと思うよ？！」

わたしらしくない。誰かの真似をして得たずるさに自分自身で吐き気がするのをぐっとこらえた。

「ちょっと焦っちゃって…。
レイさんと自分を比べて…悲しくなっちゃう日が多くて」

「さくらちゃん元気出してよ
さくらちゃんが元気ないと俺、悲しいよ。

あ、すいませーん！」