【完】さつきあめ

「なんだ…。
レイの予想は大外れかぁ。そんな大切なことも光はあなたには話してないのね。
なんか安心した。さくらちゃんなんてレイの相手にもなんないし、光を好きなら下から指でもくわえて見ていたら？
さくらちゃんなんか絶対レイにかなわないからっ！」

そう言い残して、レイがお店を出ようとした。
気づけば、無意識に声が出ていた。

「負けないっ。
あたしがシーズンズのナンバー１になる。
あたし、絶対あなたになんか負けない」

足を止め、振り返る。　にやりとした馬鹿にしたような笑みを浮かべる。

「小笠原さんから指名貰ってるって聞いたからどんな特別なものを持ってるのかと思っていたけど、少し綺麗なだけの普通の子じゃないの。
レイに歯向かうなら、遠慮なくつぶさせてもらうね」

にこりと微笑んだまま、レイはお店を出て行った。
少しだけ立ち止まり、追いかけようと外に出たけれどレイの姿はもうどこにもなかった。
嫌に煌びやかなネオンの光が眩しかっただけで

「夕陽？」

「光………」

光はいつもの調子でこちらにきて、頭をぽんぽんと撫でる。
いつもと変わらない笑顔が、今日は嫌で嫌でたまらなかった。

「どうして…」

「え？」

「光はなんで…レイさんにそんなに期待するの…？」


「レイはこの系列でもナンバー１になる器を持ってるような女だから、期待はするよ…」

「じゃあ光はあたしがナンバー１になる器じゃないから期待もかけてくれないんだね！」

感情的になるあたしに、光は傷ついた顔を見せた。
どうして傷つくような顔をするの？好きな人がいて、その人が望むなら何でもしてあげたいのに。どうして光はこんなにも求めてはくれないんだろう。

「夕陽に期待してないわけじゃないよ…。
俺は…夕陽にはそのままでいてほしいから…」