光からお話はたくさん聞いている。
それだけで嫌な気分になった。
一体どんな話をどれだけ聞いているのだろう。
そんな考えとは他所に、レイはぎゅっと強くわたしの手を握りしめた。

「さくらちゃん仲良くしてね」

犬みたいに人懐っこい笑顔を見せて。

「アルマンドお願いしまぁ~す!」

お店が開店してから、平日なのにまるで週末のような賑やかさを見せた。
大半がレイのお客さんで、平日だというのに高級ボトルがばんばんおろされた。

露出の高いワンピース。
ぴったりと密着させた体。可愛らしい顔をしながら隠し切れない色香を持っているような子で、ピンク色に染めた頬でお客さんに顔を近づけ。そっと耳打ちをしている。
自分とは正反対の女の子。でもまるでその生まれ持った華やかさは水商売に選ばれたような女の子だった。

「あの子すごいね…」

指名で来ていた安川はぼそりと呟く。

「ねぇ、さくらちゃん俺もなんかボトルいれようか?
この辺ぐらいだったら…」

安川はメニュー表のシャンパンを指にさす。
それは今までの安川では考えられないような金額のボトルだった。

「無理無理!いいんだってば!あたしはお店に安川さんが来てくれるだけで嬉しいんだからぁ…」

「さくらちゃんって本当に優しいよね」

「そう?」

「俺、さくらちゃん以外指名できなそうだわ…」

照れ臭そうに笑う安川。
お客さんのそんな言葉が大好きだった。
ここはお客さんに夢を見させる場所。
でもいつか高橋は言った。お前の優しさは弱さだと。