温かい雨が頭の先から顔に、そしてゆっくり頬、顎をつたって身体の中に溶け込んでいく。

夏の雨は温かかったはずなのに、するりと身体の中に落ちる頃には鋭い冷たさが胸を突き刺していく雫に変わっていた。

悲しい、寂しい、苦しい、悔しい、許さない。
自分の中のありとあらゆる負の感情を集めれるだけ集めて、遠い空を睨みつけた。

甘ったるい蜂蜜のような夕焼けの空が見えて、これが天気雨だったのだと今更になって知る。
こんなに美しい景色が目の前に広がろうとも自分の中に芽生えたどす黒い感情が少しも消えてくれないことに失望した。

「さー、ちゃん?」

その名を空に向かって呼びかけても、返ってこない現実を突きつけられ絶望した。
いくら願っても叫んでも届かないものがあると知ったのは18歳になったばかりの夏の、怖いくらい綺麗な夕焼けの空の下だった。

蜂蜜色に染まっていく空を睨みながら、泣き続けた。

誰の意志でもない。

あの夏、わたしは自分の足でこの場所にきて、自分の力で戦うことを選んだ。