「は?! いや、ちょ、待て待て待てー! ポリさん話聞いてや!! ちゃうねん!! 何か知らんけど財布ポケット入れてたのん無くなってんねん!! ほんでこれお前らが外出れ言うから、会計出来へんかっただけやて!!」

「あのな、捕まりたくない奴は皆御託を並べるんだよ」

ちゃうやろーーーー!!!! なんて、彼の悲しき雄叫びは警察の前では何の役にも立たず、パトカーに押し込められそうになったその時、弦と警官の間を何かが通り抜け、パトカーに当たった後、警官の顔を目掛けて飛び、怯んだ隙に「こっちへ来い!」の声を合図に弦は走った。

何が警官に当たったのかと、目を凝らして下を見ると、結構大きめの石だった。ポリさん、ごめん!! と思いながらも捕まりたくない弦だった。

もう一人の警官が走る弦を追いかけるも、実は陸上現役の彼に勝てる猛者もおらず、彼は無事に逃げることが出来たのである。

だがしかし、手に握っているのは未会計の充電器。蚊も殺せない優しい彼は見事に初上京で犯罪者の仲間入りと化した。

「こ……こんなはずちゃうかったのに…」

「あんなの警官が悪いんじゃん、気にする事ないよ」

ふと聞こえるその声に、弦が顔を上げて、視線を手元の充電器から目の前の男へ向けると、金髪のマッシュヘア男子がバイクに跨っていた。

「あ……ありがとうありがとう!! 何で助けてくれたん?!」

「警察が大嫌いだから」

「あ……へぇー」

鈍感な弦も何かを察した。目の前の彼も犯罪履歴があるのかもしれないと。だって、腕にグルグルのトライバルのタトゥーが入っているのを隠そうともしない彼が少し狂気的に見えて…。