岡本と 幸助 は、楽屋にいた。
「ねぇ、先輩?俺、すっごく不安な点があるんやけど?」
「・・なんだよ、あの二人いい感じだったじゃん?なにも言わなくても、あそこまで仲良くなれるやついねぇよ」
「・・それは、そうなんやけど・・・」
「・・なんだよ!じれったいなぁー!なにが、不満なんだよ!早く言えよ!」
「・・・みとさんが、勇気のこと、本気になったら・・・」
「・・・本気になったらって、まだ、わかんないだろ?」
「・・勇気のやつさ、まだ、忘れてないんや。今でもまだ、好きなんかもしれやん」
「・・あっ?誰のことだよ」
「・・勇気の好きな人さ・・・」
「・・えっ?好きな人?」
「・・勇気が、片思いしてる人・・・三崎先輩の同級生なんや」
「・・・えっ?マジ?」
「・・・俺、ちょっと後悔してて・・・」
「なんだよ、岡本、あいつのこと紹介しろって言ったのはおまえだろ?」
「・・そうや?他の女を、紹介したら、きっと忘れられるからって、おれが、あいつに言うてしもたんや」
「・・岡本・・・、俺、もう疲れたよ。俺は、いつ素直になればいい?あの人には、伝わらないみたいなんだ」
そうやって、悲しそうな顔をする勇気を、ほっておけやんかったんや。
「・・俺、あいつのこと、余計に苦しめることになるんかな?」
「・・・」
「・・一度、好きになった人を、簡単には諦めれやんよな?」
「・・・岡本、もし、みとが、勇気ってやつに、本気になったら傷つくのはみとだ。でも、それは、彼の事情を知っているか知らないかでも決まる。それでもみとが、勇気のことを、好きだって言うなら・・・俺たちは、なにもできないかもしれない。
あいつさ、一途に俺のことを思っててくれたから。」
「先輩、俺はね、あの二人にはうまくいってほしい。だって、運命の出会いなんでしょう?」
「あぁ、みとは、少なくとも、そう思ってるよ」
「・・だったら、二人の運命の出会いを、信じるしかないよね?」
そう、信じるしかなかった。

ある朝
「みと、どうしたの?そのキーホルダー、かわいい」
「・・瑠美、おはよう」
「・・もしかして、例の“彼”からの、プレゼント、とか?」
「例の彼って・・・・」
「もう、みとってば、SAMURAIの のいとこってだけでも羨ましいのに、そのメンバーの岡本くんのクラスメイトを、紹介してもらえるなんて強烈だよ」
「・・・・確かに、それ聞いたときは、強烈やったわ。これが、うわさになったら、前より嫌がらせ、増えるかもしれやん。」

しかし、ロッカーのなかには、大量のトカゲ?と、思いきや?
「・・何?この量」
そこに入っていたのは、大量のファンレターたち。
「・・・ファンレター渡しといてください!・・・・って、うちは、召使いでも、執事でもないわ!マネージャーでもないんやから!」
「・・でもー、電話も、メールもできちゃうんでしょ?有名人になっちゃったよねー?みとってば。」
「・・・まぁ、違う意味でな。ええよ?後々困るのは、たぶん、兄ちゃんたちやしな。」
うちらが、そんな話で、盛り上がっている頃やった。
ある、カフェで、課題をやっている勇気くんのもとに近づく女性がいた。
「・・・」
「・・へぇ?やっぱり、本気で医者、目指しているんだね」
「・・ビックリした・・。なんですか?その、嫌みな言い方・・・」
「この前見ちゃったんだよねー。あんたが、女の子と、イチャイチャしてるの」
「イチャイチャなんて、してませんよ。別にいいでしょ?息抜きですから」
「・・あんたって、誰とでもそういうことするんだ」
「・・・頼まれるんですよ。1日だけ、付き合ってくれとか、彼氏のプレゼント選ぶの手伝ってとか。断る理由なんてないですよ。俺にはそもそも、彼女いないし。気を使わないし」
「・違うわよ!この前の日曜日よ」
「・・・みとさんは、岡本の知り合いですよ」
「・・なによ!私といるときは、いつも怒ってるくせに」
「・・・怒っているのは、美鈴さんの方でしょ?」
「・・・・」
「・・・僕は、美鈴さんとケンカしたくて話している訳じゃない!」
「・・わたしだって、別にあんたなんかと・・・・」
「・・だったら、おれが、誰といようと、誰と笑っていようと関係ないでしょう?
あなたには、もう付き合っている人がいるわけだし?」
「・・な、なによ、それ」
「・・・俺の邪魔をしに来たんですか?課題が進みません」
ガタッ
席をたつと、
「俺たちは、きっとうまくいかない」
「えっ?ちょっと、それ、どういう意味よ」
「・・・・あなたともし、付き合うことになっても、うまくいかなかったってことですよ。喧嘩ばかりで・・・お互い、疲れてしまうから・・・」
「・・・・・!?」
付き合っているわけでもないのに、まるで別れ話をしたような二人の空気だった。
勇気は、そのばから、いなくなってしまった。

「・・・な、なによ。わたしの前では、あんな笑顔・・・見せてくれないじゃない・・・・」
美鈴さんは、ここで、涙を流した・・・
「みとさん、俺はやっぱりダメです。彼女の前では、素直になれないよ・・・・」
そして、美鈴さんも・・・・
「・・・どうしてわたし、素直に言えないままなんだろう・・・・」
ふたりの気持ちは、まるでルーレットを反対方向に廻されたように、すれ違っていた。