それは悲しいんじゃなくて、嬉しいからだと私は気づいた。

嬉しいから泣きそうになっているんだ、と。

「俺のこれからの人生を陽葵さんにあげます」

武智さんのその返事に、今度は私が泣きそうになった。

「景さん、好きです」

そう言った私に、
「俺も陽葵さんが好きです」
と、武智さんは答えてくれた。

これから先に、私たちはケンカをすることがあるかも知れない。

お互いの顔も見たくなければ口も聞きたくないと言う日もあるかも知れないだろう。

だけども、翌日にはきっとこうして一緒に食事をして笑いあっているだろう。

死が別つその時までと言うのは早いような気がするけれど、その時には“この人と一緒にいてよかった”とそう思いたい。