それから数日後、行きつけのバーで芽実と一緒に飲んでいた。

「えっ!?

武智さんのことを何にも知らないの!?」

そう聞き返してきた芽実に、
「知らないことに気づいちゃったんですよ、ええ」

私は返事をすると、カシスオレンジを口に含んだ。

「家族とか子供時代とかそんな話をしたことがないなって思って。

そんなことを考えてる私も私のような気もするし…と言うか、早いかな?

そう言う話をするのって、気が早いかな?

年齢も年齢だから結婚を急かしているって思われるのも嫌だし」

「陽葵ちゃん、落ち着こう」

芽実が私の肩にポンと手を置いた。

「そう言うのに早いも遅いもないと、私は思うんだよね。

ただ何となく知りたくなったって言って話を切り出せばいいんじゃない?」

私の顔を覗き込むと、芽実は言った。