「はい」

私が返事をしたことを確認すると、武智さんは歩き出した。

「あ、あの…」

思わず声をかけた私に、武智さんは振り返った。

私は深呼吸をすると、
「手を繋いでも、いいですか?」
と、武智さんに自分の手を差し出した。

武智さんは一瞬だけ驚いたと言う顔をすると、
「は、はい…」
と、返事をして私と手を繋いできた。

たったこれだけのことなのに、武智さんとの距離が大きく縮まったような気がした。

「何か恋人同士らしいですね」

そう言った武智さんに、
「そ、そうですね…」

他に言うべきことがあるとは思うけれど、私はそう返事をすることしかできなかった。

我ながら語彙力がない…。

でも、少しだけ歩み寄ることができたと思うことにしようと、私は自分に言い聞かせた。