雑誌の取材は今までに何度か受けてきたが、いつもどことなくイライラして、後味が悪い思いをするので、苦手だった。イライラするのは、彼女のブログに残すコメントのように、気の利かない答えしかできないからだ。後味が悪いのは、取材の出来が悪いからだ。 彼はときどき本屋へ立ち寄っては、音楽雑誌を立ち読みし、ミュージシャンがするべき応答の仕方なるものを研究し、使えそうなフレーズをいくつか用意していた。たとえば、「今回のアルバムのコンセプトは…」というような。そのようなフレーズは、使うたびに背筋がむずがゆくなるような思いをしたが、取材自体はスムーズに進んだので、今回もこのスタイルで通すつもりだった。

