彼にとって、演奏することは「自分が満足する」ことだった。彼は、自分の演奏が聴衆に受け入れられるかどうかということを、あまり気にしたことがなかった。いつも、演奏を終えたときにマスターがくれる拍手。そして、それに合わせたように客が暮れる拍手。彼にとって、それらの拍手は確かにうれしいものだったが、彼を満足させるだけであり、「喜び」のほうは、彼がそれを感知するできるほど大きくはなかった。