別れの曲

 若い女性が一人、彼の方へやってきた。髪型は黒いショートボブで、白地に大きな黒い花の模様をあしらったモノトーンのワンピースを着て、足元は、黒のロングブーツだった。色白の顔は頬の辺りがうっすらと赤みを帯びていて、酒を飲んでいることをうかがわせた。でも、彼女が近くに来た時、彼女の眼は、しっかりと彼を捉えているようだったので、まだそんなには酔っていないんだな、と彼は思った。その少し吊り上り気味の二重まぶたが、気の強さを感じさせた。

 その後、彼女とすごした時間の中で、風が吹いたら飛んで行ってしまいそうなくらい華奢で頼りないのに、どこか、手を差し伸べるのをためらってしまったのは、その眼のせいなのかもしれなかった。