「ただいま。」

「・・・。」

「・・・ただいま、莢?」

「・・・。」

近づいてくる大好きな人の足音。

「見ちゃだめっっ。」

見られてしまう。

私は立ち塞がり彼がキッチンに来ないよう阻止しようとした。

「ただいま。」

ぎゅっと抱きしめられて警戒と不安は解けてしまう。

「ありがとう。」

「?」

「どうしてお礼言うの?」

「莢が頑張ったの、伝わったから。」

「、、、。」

もうバレてるのに知らん振りをしてみる。

「扉開ける前から甘い香りしてたよ。」

あぁ、もう言い訳できない。

観念して白状する。

「今年で最後だから手作りのチョコプレゼントしたかったの。」

「最後?!」

あ、言い方がまずかったかな。

綾人の慌てた顔を見てなんだか笑ってしまった。

「来年は二人じゃないから。」

「二人だけのバレンタインは最後だから、頑張ったけど上手くいかなくて。」

「ごめんな」

言い終える前に彩人が言葉を被せてきた。

「それって。」

「うん。」

包まれたままの私に綾人は優しく熱を移した。