きっとサクラが咲く頃

日付けも変わる頃、匠馬は保安検査の扉に吸い込まれるように旅立った。

あれだけ見たくなかった、旅立ちの瞬間。
心穏やかに見送れたのは…ちゃんと私達二人の未来が見えてきたから。
夏には二人で暮らそうと約束をした。住みたい街を考えておいて、と。



そして…もう一つ、私達は約束をした。

旅立つ直前、匠馬は「四月の初め頃、仕事の休み取れそう?」と聞いた。
「ちょうどイースターの休暇だから、休みが取れたらおいで。沢山ロンドンの街を案内するよ」と。

私はコクりと頷いた。
「じゃぁ私は…桜の便りを届けるね」と。

「去年は満開前に行っちゃったでしょ?」
そう言うと、軽く私を抱き寄せて‐そっと頬に唇を落とした。「楽しみにしている」と言って頭を撫でると、ほんの少しだけ名残惜しそうにしながら…旅立って行った。


匠馬の姿が見えなくなったら、私は一目散に回れ右をして歩き出す。
これからの、未来の為に。


月曜日出勤したら、早速休みの申請をしよう。
飛行機のチケットも取ろう。



二人が並んでロンドンの街を歩いていく姿。
それはきっともう、すぐそこまで来ている。


‐私達はどれだけ離れていても、きっと繋がっていられる。