きっとサクラが咲く頃

宏平も両親も名残惜しそうに、匠馬と挨拶を交わしている。
私はそれを横目で見ながら、トランクに匠馬の荷物を積み込んでいた。

「匠馬君、次の帰国は卒業してから?」

「そうですね、もう長期の休みは無いんで。八月かな?」

「卒業したらどうするの?帰ってくる?」

「いや、帰る予定はないです」


えっ…?と思って匠馬を見ると‐匠馬は私の手首を持って、引き寄せた。

「おじさん、おばさん、帰国したら…千聡を貰って行きます。ダメって言っても、貰いますから」


何を今言ってるんだ!と私の頬は一気に赤くなる。


「い、い、今言う?て言うか私も聞いてないんだけど?!」

「元々その予定だったんだけど?」
「全っっく良くない!良くない!」


匠馬の手を振りほどいて回りを見ると‐見事に石化した父さんと宏平。
匠馬の両親とうちの母さんは「まぁ」と目を輝かせている。

「あなた、嫁に行くのが隣ならば文句ないじゃない」
「千聡ちゃんなら歓迎するけど?ね?」

母二人は…もはや私を差し置いて盛り上がっている。
居心地の悪い私とは違って、匠馬はその様子を見てニコニコと笑っている。

「………そろそろ出すよ!はい、乗って!!」


無理矢理引き剥がすように、匠馬を車に押し込む。

「じゃ、また夏に!」と匠馬は窓から挨拶をしている。
私はそれを振り切るように、最初からアクセス全開にして車を発進させた。