駐車場に停めた車に、荷物を積み込んでいく。
十五年選手の青いセダンタイプの車。
私達は後部座席に並んで座って、色んな所に行った。
外観の塗装だけは色褪せず……ただ、座席のシートはどんどんと古ぼけていく。
「次の車検で、廃車にするんだって」
車にエンジンを入れたときに、そう告げると…「あぁ、そう」とだけ返事をした。
そしてサイドブレーキを引いて、ブレーキから足を離すと‐車はゆっくりと走り出す。
ハンドルを右に切り、出口の方向へと走らせる中で…微かにだけど「寂しいな」と聞こえたような気がした。
車は駐車場を出て、高速道路へと入っていく。
不意にバックミラーに映った彼は、大きな欠伸をしている。「寝たきゃ寝れば?」と言うと、何だか不機嫌そうな顔。
「今日みんなどうするの?」
「うちで鍋だよ。蟹買ってきてた。
匠馬ん家からは牡蠣持ってくるって」
「そりゃ楽しみだわ。宏平(こうへい)も居る?」
「バイト七時までって言ってたから。
だから寝たいなら今のうち」
その言葉を聞いた瞬間‐リクライニングを最大に倒して、目を閉じ始めた。
十三時間のフライトの後だ。疲れているのは無理はない。
やがて道も半ばに来た頃には、大きな寝息が聞こえてくる。
その時に初めて…この言葉を言っていないことに気付いた。
‐おかえり、匠馬
十五年選手の青いセダンタイプの車。
私達は後部座席に並んで座って、色んな所に行った。
外観の塗装だけは色褪せず……ただ、座席のシートはどんどんと古ぼけていく。
「次の車検で、廃車にするんだって」
車にエンジンを入れたときに、そう告げると…「あぁ、そう」とだけ返事をした。
そしてサイドブレーキを引いて、ブレーキから足を離すと‐車はゆっくりと走り出す。
ハンドルを右に切り、出口の方向へと走らせる中で…微かにだけど「寂しいな」と聞こえたような気がした。
車は駐車場を出て、高速道路へと入っていく。
不意にバックミラーに映った彼は、大きな欠伸をしている。「寝たきゃ寝れば?」と言うと、何だか不機嫌そうな顔。
「今日みんなどうするの?」
「うちで鍋だよ。蟹買ってきてた。
匠馬ん家からは牡蠣持ってくるって」
「そりゃ楽しみだわ。宏平(こうへい)も居る?」
「バイト七時までって言ってたから。
だから寝たいなら今のうち」
その言葉を聞いた瞬間‐リクライニングを最大に倒して、目を閉じ始めた。
十三時間のフライトの後だ。疲れているのは無理はない。
やがて道も半ばに来た頃には、大きな寝息が聞こえてくる。
その時に初めて…この言葉を言っていないことに気付いた。
‐おかえり、匠馬



