きっとサクラが咲く頃

「じゃぁ彼女とかできたりして?」
匠馬は普通に‐私のベッドに腰掛け、顔を除きこんだ。

「まぁそれならそれでいいんじゃない?」

「寂しくない?」

「別に………」

「ホントに?」と言った瞬間‐匠馬の顔が迫ってくる。
軽く唇にキスを落とすと、私の頭を腕で包み込んでは胸の中に沈めていく。ゆっくりと…海の中に吸い込まれるように。

‐久しぶりだから…
そう耳元で囁いては、私の服を脱がしていく匠馬。
どこか前よりはぎこちなくて……『久しぶり』なのは、私とだけではないんだなという安心感が込み上げる。

‐ホントは、寂しい…
その言葉を呑み込んで…私は匠馬のセーターの中に潜り込む。
しなやかな肌の触れあう感覚が……どこか懐かしく、愛しい。

そのまま私は、匠馬によってベッドの中に沈められていく。
いつもより丁寧に‐丁寧に、私を扱う大きな手。

私はこの人以外に男の人を知らない。
でも……ここまで大切に扱う人が、この世に居るとは到底思えない。

‐「俺が抱いてやる。一番大切に扱ってやるから」

一番最初、彼に抱かれた時に言っていたセリフ。
その一度だけでなく…何度も肌を重ねても、私のことは丁寧に…丁寧に扱ってくれた。

でも私達は……あの頃からちっとも動けていない。変わらないこの距離感に甘えながらも…少しだけ、空しい気持ちが広がるのを感じている。