‐‐十二月三十一日 大晦日

相変わらず混み合う年末の、羽田空港国際線到着ロビーに私は居た。
辺りは急足で駆け抜けていく人、スーツケースを持ったままさ迷っている人……年齢も人種も様々な人が入り乱れているこの場所で、私は一人ベンチで携帯を触っては到着を待っている。


‐もうそろそろだろう。

定刻通り、つい一時間前に飛行機は到着したはずだ。
もっとも……『無事に乗っていれば』だけれど。

『空港に着いた』だの『そろそろ乗る』だのの経過の連絡が一切ないのは『らしい』が……少しは状況が見えていないと、本当に帰ってくるのだろうかという思いが頭を掠めていく。

特にこの待っている時間‐それは永遠に続くんじゃないかとさえ思うほどだ。


そんな私の思いをかき消すように、カツン・カツンと聞きなれた足音が聞こえてくる。
それはずっと昔から知っていて……数十メートル離れててもわかる。

反応するように顔を上げると‐久しぶりに見る彼の顔。
心なしか、ほんの少しだけ頬のラインが細くなっていて…痩せたような気がしている。