片恋桜

後悔なんて二度としない。“幸”は自分の手で掴むの。


“どうしたの?”


“どうして泣いてるの?”


「だって・・・心が痛いから」



「速報!」

桜と同じクラスの健史郎が、
クラスのみんなに大きな声で伝える。

「大地に・・・大地にラブレターが!!」

「きゃあぁぁ!!!」

女子たちの黄色い声がすごい。
男子たちは耳をふさいでいる。
女子たちはいっきに健史郎の周りを囲んだ。

真意はクラスを飛び出し、桜を探しに学校中を走り回る。

桜・・・桜・・・さくら!!

「どこ・・・・・・?」

そうつぶやいたときだった。
誰かの体に思い切りぶつかり、
真意は遠くに跳ね飛ばされる。

仰向けになって、真意はあがいていた。

「っ――・・・。ゴメンなさい・・・」

「大丈夫か!?真意!?」

あぁ・・・この声・・・たしか・・・

真意はゆっくりと瞳を開けてゆく。
目の前には愛しい人の姿が見えた。
真意は気のせいかと思い、もう一度よく見てみる。

やっぱり祐也だった。

「祐・・・也・・・?」

「大丈夫?真意」

今一瞬、桜の声がしたような気がした。
真意は立ち上がり、周りを見渡す。

桜の姿が目の前に写る。

「ゴメンね!祐也!後で!・・・桜・・・よく聞いて」

真意は桜の両手をぎゅっと握り締めて・・・

「なーに?」

桜は屈託のない笑顔で真意を見る。
言っていいのか。真意は一瞬戸惑った。
言って、もしも泣かせたり、幻滅させたりしたら・・・。

それでも、言わなきゃならない。
真意は胸に覚悟を決め、桜のほうをじっと見る。

「大地が・・・大地がラブレターもらって・・・」

え・・・?

桜は一瞬時が止まったように感じた。

カツ―――ン・・・・・・。

静かな廊下に一歩踏み出した足の音が鳴り響く。
桜は後ろを振り向いた。誰かすぐにわかる。

あの音・・・あの歩き方・・・あの立ち姿・・・あれは・・・。

「大地―――・・・」