一途彼女×S系彼氏

接客を続けながら
ちらっと莉子に視線を移せば
口を開けて呆然としていた。


……鳴くには足らないか。


そう思った俺は行動をエスカレートさせた。


「手、小っちゃいんだね~!
可愛い!!」


俺は客の手を握って
自分の指と絡ませた。


ニコッと微笑んで
客がぼーっとしている間に
莉子を見れば
やっとこ泣きそうな顔をしてくれた。


…たまんない。


あの顔見てるといじめたくなるんだよ。


俺は莉子の存在に気付いてないフリをして
客とまた目を合わせていると
莉子が近づいてきた。


「ね、ねぇ、颯人…。」


頭上から聞こえた声は
泣くのを我慢して震えていた。


「ん?どうしたの?」


ここは教室。
いつものように表の俺を演じ、
いじめたい衝動を抑えて
優しく聞き返した。