少し風に冷たさが出てきたこの季節。

朝は今までの耳をつんざくようなセミの鳴き声じゃなくて、暖かい朝日に包まれる部屋。

そんな部屋で夢と現実の狭間で心地よくゆらゆらしていた時

あいつはいつものようにやって来た。


ピンポーン…


「っ!」


気持ちが良くて、布団から出たくないこの時間。

普段なら、お母さんが起こしに来ても絶対起きないけど、この音が聞こえてきたのなら話は別。

ある意味目覚ましより目覚めのいい朝を迎えさせてくれるこの音は、あいつの侵入を知らせる警笛みたいなもん。


ガチャリ


「奏~、烈来てくれたから早く起きなよー」


部屋の扉を開けて、それだけ言ってから出て行ったお母さん。

代わりに部屋に入って来たのは…


「ふーん…今日は起きてんだ」

「あ、あんたが起きろって言ってんじゃない!!」

「…言うこと聞けるなんて、お前もようやく人間らしくなったんだ」


…うっざい!


たった今、失礼極まりない発言をして冷たい視線を私に向けた彼は

家がお隣さんで、私の小さい頃からの幼なじみの桐谷 烈(きりたに れつ)。