「美しい上にかっこいいなんて反則だわ。ね、蜜香?」

「オネエじゃなければもっといいんだけどね」


まぁ、オネエじゃないからといってあの人が雲の上の存在であることは変わらないんだけど。


「そんなことよりほら、私達もそろそろ仕事に戻ろ」


久我社長はあくまでも目の保養。

私みたいな凡人が相手にされるわけないんだよ、うん。




「ふわぁ…」


ある程度仕事も終え時計を見てみれば、丁度帰宅時間になろうとしていた。

家で残りの資料はまとめて、お風呂に入って…そのあとビールでも飲もうかな。

ふふ、幸せだ。


「じゃ、お先に」


そんなことを考えながら、ゆめと虎ちゃんに軽く合図

久我社長のようにすべてにおいて恵まれているわけじゃないけれど、こういう小さなことに幸せを感じて。

それだけで満足だったし、そんなありきたりな幸せがこれからも続くと思ってた。


「あ、支倉ちゃん。今帰りかしら?」

「…え、社長?」


だからまさか、誰がこんなこと想像しただろうか。



「丁度良かったわ。一緒に来てちょうだい」



―――今日から私の人生が一変する、なんて。