オネエが野獣になるときは。



***


コツコツコツ


翌日、廊下を歩いていれば向こう側から聞こえてくるハイヒールの音

とっさに私は顔を俯ける。


「おはようございます社長。今日もお美しいですね」

「おはよう。ふふ、ありがとね」


いつもなら目の保養でその姿を拝んでたけど、昨日の今日で社長とは関わりたくないっていうか…

早く通り過ぎてくれ!


「支倉ちゃん」


…なんていう私の願いも虚しく


「…っ、はい!?」

「コーヒー、社長室までよろしく」


途端に社長から私に移るみんなの視線。

社長とは結婚のことがバレないためにも必要以上に関わらないつもりだったのに

…変に社員から恨まれたりでもしたら私が社長を恨んでやるんだから。





「失礼します。コーヒー持ってきました」

「ありがとう支倉ちゃん。それにしても、すんごい迷惑そうな顔してるのね?」

「…当たり前です。みんなの前で話しかけるんですもん」


社長が去った後、みんなから嫉妬の眼差しを向けられた私の気持ちなんか分からないでしょうね!