別れても好きなひと

「着いたぞ。歩けるか?」
「大丈夫。」

私は助手席のドアを開けて降りようとした。でも足にうまく力が入らなくて膝がガクッと折れた。だめだ…私。

「え?莉子?」

ドアの影でうずくまる私に大悟が慌てて駆け寄る。

「ごめん。大丈夫か?」

なんで大悟が謝るのよと思いながら差し出される大悟の手に自分でも自然に自分の手を伸ばしていた。

大悟は私の肩を抱きしっかり支えながら部屋へ送ってくれた。デジタルキーの前で私が番号を押そうとしながら、なんどもミスタッチすると「何番?」大悟が代わりに押そうとした。

「20100401」

私の言葉に大悟は一瞬からだの動きを止めた。

「ばか」

たぶん何て言ったらいいかわからなかった大悟が言ったのはそんな言葉だった。

それは私たちの入籍した日だった。