別れても好きなひと

「杉崎さんは私を放っておけなかったんだと思います。夫を失って、一人になった私を。」
「父は好意を持っていない人と同居したりはしません。あなたに好意があったんだと思います。」
「いいえ。私は夫の介護で収入がなく…施設の支払いも莫大で…恥ずかしながら自己破産しているんです。住んでいた家も売ってしまって…。杉崎さんは部屋が余っているからと住まわせていただいていたんです。」

今となっては父の思いはわからない。でもずっと父の気持ちや考えを知ろうとしなかったことを後悔した。

「夫も、財産も失って私は杉崎さんに依存していたのかもしれません。２年前は冷静じゃなくて…すべてあなたのせいと思い込むことで自分を保っていたのかもしれません。本当に申し訳ありませんでした。」

後悔とすこしほっとしたのと…複雑な感情が溢れて私は思わず大悟の温もりを求めた。自分でもどうしたらいいかわからない。

大悟は私を抱き締め背中をさすりながら落ち着いた声で話始めた。