別れても好きなひと

「本当にごめんなさい。」

高畑さんが床におでこをつけて私に謝るのを見て私はぴんと張りつめたままだった気持ちが溶けるのを感じた。

「私は…母が大好きでした。大変なことも辛いこともたくさんあったけど、やっぱり母が大好きでした。」
高畑さんは顔をあげてまっすぐに私を見る。

「同じくらい父も好きでした。」

私は泣きそうになり大悟の手をぎゅっとにぎった。

大悟が優しくその手を包む。

「正直、父には最後まで母を想っていて欲しかった。母だけを想っていて欲しかったんです。ごめんなさい。」
「当然です。謝らなきゃならないのは私です。全部私が…。」