大悟に私が渡したのはパリ行きのチケット。

「お願い。大悟。このチャンスをちゃんとつかんでほしい。」

「俺は莉子と離れたくない。それだけじゃない。パリで前向きに頑張りたいっていう気持ちに自信が持てないんだよ。美容師としての地位や名誉より、今は倉科大悟として、ひとりの男として幸せつかみたい。その為には莉子がいないとだめなんだよ。」

「……。」

「なんでわかってくれないんだよ。」

「ちょっと来て。」

私は大悟の手を引いて浴室に入った。