お嬢様は恋を知らない

「またそのようなお顔をしていらっしゃる。貴女は本当に、右も左もわからない生まれたての赤子のようですね」

「どういう意味!?」

麗さまはふっと笑って私に顔を近づける。

「私は貴女のことが好きだと先程から申し上げているのに……貴女は何も理解していらっしゃらない、という意味です。ご理解いただけましたか?」

「わ、私だって…麗さまのことが好きだよ! やさしくてかっこよくて、たまに意地悪だけど…昔からずっと私の王子様だもん!」

「ありがとうございます。お嬢様」

なんでそんな余裕そうな顔するの!?

「お嬢様にもきっと、私の気持ちをご理解いただける日が訪れると思います。その際は、私に教えていただけますか?」

「わかった。約束する」

麗さまの気持ちってなんだろう?

「お嬢様、ご自分の足で歩けますか? 私がおぶって差し上げましょうか?」

「バ、バカにしないで! 麗さまなんて嫌い!」

まださっきの恐怖が残っていたのか、足がもつれてバランスを崩した。

「お嬢様! 私のそばを離れないでください」

恥ずかしさで爆発してしまいそう。

麗さまの言う通り、私はまだまだお子様だ。