「なっ……」


「お前に口は百年早えからな」


「わ、わたしだってキスくらい……!」



そう言って反抗しようとしたら、彼の唇がずいっとわたしの唇に寄せられた。

ふたりの距離がなくなってしまうまであと数センチ。



「じゃあ、してやろうか?」


彼の吐息がわたしの唇にかかる。

頭がおかしくなりそう。


『聖那、こっち向いて』


ああ、思い出したくもない。

なのに、わたしは彼の唇の感触を覚えている。

甘くて、照れくさくて、それでも愛おしかった。



「……泣かなくてもいいだろ」

「え?」



いま、わたしは泣いているのだと廉の言葉で自覚した。


なんで、涙なんて出てくるの。


もう全部、忘れたのに。