すると、彼は驚いた表情を一瞬浮かべたがすぐに元の怪訝そうな表情に戻った。


「なんだよ。その手は」

「一人で立ち上がるにはしんどいでしょ?」


相当な傷を負っている彼が一人で立ち上がるのはきっと辛いはず。

だからせめて……と思い手を差し伸べたんだ。


「うるせぇな。俺は一人でも立てんだよ」


眉間にシワを寄せてそう言いながら彼は立ち上がったけど、力があまり入らないのか壁に手をついている。


「無理しちゃダメだよ」


思わず、彼の体を支える。


「触んな」


その声をわたしは無視した。

さすがにわたしもけが人を放置して帰るようなクズではない。


「こんなになるまで、誰にやられたの?」


ここまで殴ったりするなんて最低だ。

そのときに初めて彼の顔をマジマジと見た。

……すごく綺麗。

誰が見ても整っていると口を揃えて言うだろうと思うほど彼の顔は美形だった。


所々に痛々しい傷跡があり、余計に見ていられなかった。