「……こんな時間に女が一人でなにしてんの」
彼はわたしの絆創膏を受け取りはせずに怪訝そうな表情を浮かべて、差し出したわたしの手を払った。
「怪我してるから……」
「あーこんなのどうってことねぇから」
嘘だ。だって血が出てるのに痛くないわけない。
「じゃあ、なんで今そんなに泣きそうなの」
彼の瞳が少し潤んでいることにわたしは気づいていた。痛いんでしょ?
「痛いのは、傷じゃねぇよ」
ぽつり、と虚しげに呟かれた言葉をわたしは聞き逃さなかった。
そして、その意味深な言葉にわたしはハッとさせられた。
だって、彼のその言葉の意味がわたしにはわかるような気がしたから。
彼が痛いのは心だ。心の傷は思うようには癒えない。どこかわたしと似ている彼。
「……そっか」
そう言いながらわたしは彼の前に自分の手を差し伸べた。なんだか放っておけなかったから。