「でっけぇ家だな」
立派な洋風の家を見上げ、そう言った廉。
ただ、大きいだけの家だよ。
わたし一人には大きすぎるんだよ。
この家はお母さんとお父さんがこだわってたくさんの思いを込めて建てた家だから、簡単には壊せない。
「……大きいだけだよ」
聞こえないようにぼそりと呟いた。
廉は何も関係ない。これ以上廉と過ごしてしまったら一人には戻れない。だから、もうおしまい。
「わざわざ送ってくれてありがと。気をつけて帰ってね」
そう言いながら、繋がれていた手を離そうとするけどぎゅっとよりいっそう力強く握られて離れない。
……なに?どうして離さないの?
不思議に思ったわたしは廉に視線を向けると、彼はおどけた様子もなく、とても真剣な表情を浮かべていて驚きが隠せなかった。
なんでそんな顔するの?
全部……見透かしたような瞳で見つめないで。
「どうしたの……?」
恐る恐る尋ねると、真剣な表情から一点し廉は柔らかく笑って「また明日な、聖那」とだけ言葉を残して去っていった。
彼は、嵐のみたいな人だなぁ。
小さくなっていく背中を見つめながら心の中でそんなことを思っていた。