「なんか、、、あったのか?」
「、、、うん。」

お互いに俯いたまま、視線を合わせることなく、
吐き出した言葉は、木製の使いこまれたテーブルへ
吸い込まれていく。

「ダメなんだ、、もうとっくに、、、」
「それは、あの人?」
「そう。仮の姿だったの。」

公衆の面前で名前を出さないのは、青柳なりの配慮
だと思う。

前にもそうだった。

「それって、どういうことだ?」

「優しさも、温厚さも、なにもかも。ううん、単に
私が見抜けなかったんだ。二年以上も一緒にいたのに
私は一体、彼のどこを見てたんだろうって。
あんなに愛しくて、好きで好きでたまらなかった
はずなのに、、、」