コットンボールに消毒液をつけて、それをピンセットで挟む。
藤堂君が笑うと、きゅって目尻が上がるところが、なんとも言えず好きなんだよね……。

「い、た」

しっ、しみるー!
一人なら叫びたいぐらいだったけど、好きな人の前だから唇噛んで我慢する……が、バレていた。

「涙ぐんでんじゃん。相当痛いんじゃね?」
「いや、ははは…痛いですけど……」

痛くて、じわっと涙が。
それが藤堂君に見つかって、その顔が思ったより真剣だから、本当に泣きそうになってきた。

好きな人にこんなかっこ悪いとこ見せて。
心配されて。恥ずかしい。
二人きりだとか喜べる余裕もないし、話したのもこれがほぼ初めてだし。

ぽたり。紺色のスカートの上に涙が落ちる。

「……ぇーん……もうやだ……」

顔を上げられなくなってしまって、涙も止まらない。
藤堂君呆れてるだろうな。

そう思ってたら、ガーゼとテープを取り上げられた。

「痛いかもしれねーけど、ちょっと我慢して」

藤堂君が膝の傷に触れる。
痛いけど、涙は止まって、またつむじが見えて。
この角度から見える彼は、初めて見る男の子みたいで。
すごくドキドキ、した。